去年初めてフルマラソンを走り切った。
ランニングシューズを取り扱うブロガーとして、フルマラソンすら走り切ったことないのどうよ?という胸の中にあった葛藤を解消するためにクソも走りたくないのに走った。その足元を支えたのが「PUMA DEVAITE NITRO」。
その後継である「PUMA DEVAITE NITRO 2(プーマ ディヴィエイトニトロ2)」を購入したので、感想をまとめてみた。
前作ディヴィエイトニトロはライトユーザーの神
フルマラソンを初めて歩くことなく走りきったのだけれど、それを支えてくれたプーマ ディヴィエイトエイトニトロは素晴らしかった。
上記レビュー記事に書いた通り「どの様な速度域であっても、どの様な着地方法であっても跳ねる」それが強い。
「誰でも履けるみんなの厚底」という製品コンセプトに相応しく、適当に足を下すだけで自然に前に進む推進力をくれ、ほぼ死体状態の雑魚を支えてくれた。タイムは「4時間27分」。日々フルマラソンに向けて走る人にとってはゴミのような記録だけれど、健康のために走っているランナーの記録としては上々だと勝手に思ってる。
でも悲しい話俺の所有している靴のラインナップだと、ディヴィエイトエイトニトロ以外で走りきれたかは怪しい。ナイキテンポネクスト%だとオーバーペースで死ぬし、その他の靴だと恐らく反発力を引き出せず死ぬ。つまりライトユーザー(俺)にとってディヴィエイトエイトニトロは神なのだ。その後継であるディヴィエイトニトロ2は更なる神かもしれないということで買ってみた。
ディヴィエイトニトロ2 外観
こちらがディヴィエイトニトロ2である。
カラーは王道の黒とイエローなどがあるのだけれど、これは「Sunset Glow(夕暮れ) - Sun Stream(日の流れ)」というテーマのカラーだ。薄オレンジとピンクが混じったカラーとなっているのだが、これが予想を超えるカッコよさ。
淡く徐々にヒールやソールに向け色濃くなっていくオレンジのトーンが上手く、鮮烈なピンクの差し色がアクセントとなっているのが素晴らしい。
ディヴィエイトニトロ2 トゥ
トゥには大き目で遠目に目立つプーマキャット。アッパーは足ざわりが良く柔らかい素材が使われている。
ディヴィエイトニトロ2 サイド
サイドにはプーマフォームストリップがソール・アッパーを跨ぐ形で刻まれている。
内側には半円形状の「PWRTAPE(パワーテープ)」。アッパー剛性を高めるためのパーツで飾りではない。
ディヴィエイトニトロ2 シュータン
シューレースホール周りはTPU?で覆われている。シューレース中央にオレンジ色のステッチラインが通っているのがオシャレ。
シュータンは昨今のランニングシューズでの、ちょうど中間ぐらいの厚さだろうか?薄くもなく厚くもなくって感じ。
シュータンをアッパーと連結させ、側面のフィット感と剛性を高めている。
ディヴィエイトニトロ2 ヒール
ヒールには夜間ランナーに嬉しい反射素材付き。結構大きめ。
ヒールライニングはクッション厚めでいい感じ。
公式説明に「かかとのフィット感を向上」とわざわざ書かれているだけあって、前作はカカト周りの評判が悪かった。超悪かった。それを改善してきた形なのである。
ディヴィエイトニトロ2 ソール
ミッドソールは「NITRO ELITE FOAM(ニトロエリートフォーム)」と「NITRO FOAM(ニトロフォーム)」が使用されている。
色がついているのが「NITRO ELITE FOAM(ニトロエリートフォーム)」で指で押すとプニプニと柔らかい。カカト周りの白い部分が「NITRO FOAM(ニトロフォーム)」でエリートより弾力と密度のある感じだ。
高さはラバーを含めおおよそ前足「30mm」中足「35mm」後足「43mm」。厚い。
アウトソールラバーには「PUMA GRIP LT(プーマグリップLT)」。摩耗量も少なく、様々な路面でグリップ力も良好。俺的ランニングシューズラバートップ3に入る出来だ。
隙間から見えるのがソール材の中に埋め込まれている「PWRPLATE (パワープレート)」。素材はカーボン。見えると入っている感があって嬉しい。
インソールは軽くアーチがついたもの。重量は27.5cm「17g」。
ディヴィエイトニトロ2 重量
重量は27.5cm「257g」
公式サイトだと27.0cm「262g」で紹介されているが、10gぐらい余裕を取っている模様。重いとクレームものだから、そういうことなんだろう。
作りの割には軽く仕上がっていると俺は感じたけれど、決してランニングシューズとしては軽量なモデルではない。疲れてくると重みを感じてくるのは確か。
ゴリゴリのレーシング用と違い厚底でアッパーやラバーに厚みと耐久力があるため仕方ないところではある。基本重量と安定感・耐久力はトレードオフ。
ディヴィエイトニトロ2 サイズ感
サイズ感については、プーマシューズらしく細身のつくりである。公式曰く幅は10.5cmだからウィズとしては「D~E」の間ぐらいで履いてみた感じもそんなものだと思う。俺の細足(D)にピッタリ決まって最高。ただ指先は若干広め。俺は好みだが、親指横にホールド感が欲しい人にはイマイチかも。
モデルごとにサイズが違うし個人的な体感でしかないが、他メーカーと比較した印象としては以下。
- プーマD<プーマ2E<ブルックスD
≦ナイキ・アディダス・ニューバランス・On 2E<アシックス2E
勘違いしてはいけないポイントとしては「長い」のではなくて、「細い」あるいは「狭い」ということ。「長さ」は他のメーカーと左程変わらない。側圧がキツくて靴のサイズを変更したことがない俺みたいな足の人は普段と同様でOK。ナイキなどで紐があまり余らない、短くなるような人は、ハーフサイズアップやワイドサイズへの変更が必要だろう。
ディヴィエイトニトロ2 履き心地と走行感
履き心地良好!前作で駄目だった踵周りもOK
まず履き心地についてだが、前作よりかなり良くなった。アッパーが柔らかいから素材が当たっても不快ではないし、随所に配置された補強材により剛性感もある。カカト周りも密着しており不快感がない。
直立した時の重心はほぼフラット。爪先だけが軽く浮いたような感触になる。ロッカー形状とまではいかないが前に力を加えると自然と倒れこむ作りで、カーボンプレートが入っていて厚底であるためソールの曲がり屈曲性は高くはない。そんな感じ。
ショック吸収に優れ自然な加速感が得られる
走りだすと靴から明確な意思が聞こえてくるかのようだ。「ヒールで走るなフォアかミッドで走れ」と。前~中間にニトロエリートフォームが集中しているあたりで、お察し出来る通り完全フォア・ミッド走法向け。カカトで着地した際はグラグラ左右にブレて、安定感と加速力共に微妙だ。
フォアorミッドで走るとニトロエリートフォームとパワープレートが弾み明らかにハマった感触がする。前傾姿勢をキープした状態だとミッドソールの持つ反発力だけで前へ自然に進む。それとニトロエリートフォームが柔らかいため、短距離走を走るかの如く蹴りだしても足に響くような悪いショックが伝わらないのは素晴らしい。
1kmを4分~5分ぐらいのペースがあるといい感じだ。反発で無理やり前に進んでいるのではなく、速度が嚙み合って流れるように走れる。
「誰でも履けるみんなの厚底」ではない
これからネガティブな話をするのだが、その前に一言「決して悪いシューズではない」。悪くはない。でも俺が再びフルマラソンに挑むなら選ばない。「誰でも履けるみんなの厚底」というコンセプトから脱線しているからだ。
反発力が得られるのは素晴らしいのだけれど、それで問題となるのがランナー自体に求められる速度。この靴を生かしていくには、大体1kmを5分ぐらいで走り切れる速度が求められる。理想的なのは4分半チョイ切るぐらい。みんなに求める速度としては、相当に強烈。
そしてゆっくり走ると、まるで反発しないのがこの靴の難点だ。反発に急かされることはないのだけれど、反発が背中を押してないのもキツイ。
それと前作でやたらと出っ張った謎のTPUパーツがついていたけれど、アレはかなり偉大だったようだ。前作は足の設置方法を選ばないニュートラルな感触であったのに対して、今作はカカト部分にグニャグニャとした感触がある。明らかにヒールで走るのに向いていない感があるし、フォームが乱れたとき足を痛めそう。
典型的なランナーに速度を求める厚底靴の一種。となると初心者に考慮して厚めに盛ったアッパーやラバーをもう少し薄くして軽量化した方がとか気になる点がポロポロと…。
二兎を追う者は一兎を何たら…
前作より速く走れるが万人向けというコンセプトから脱線し、初心者とガチ勢どちらに対しても中途半端。そんな印象。ある程度の速度があれば一体感のある楽しい走りが出きるし、悪くはないのだけれど、何とも言えない微妙さがある。
デイリーユースで使うにはチョイとパワフル過ぎて、レースとそれに向けたトレーニングに使用するならもう少々軽量であって欲しい。前作はオンリーワンなところがあったけれど、今作はレース本番ディヴィエイトニトロエリート2を履く人のトレーニングシューズでしかない感がある。違う。俺の欲しかったのはそれじゃない。
「二兎を追う者は一兎をも得ず」という印象に尽きる。アッパーを「2」ソールを「1」にしたディヴィエイトニトロ3をお待ちしております。
悪くはない。ハイペースで走るなら「2」の方がいい。でもコレを履くなら他のでいい感が…
ダラダラ走ってもいい感じの反発をくれるオンリーワン。俺は「1」派。